企画展

洞水東初禅師展-没後350年を記念して

会期:令和2年・2020/9/4-令和3年・2021/2/25

瑞巌寺100世洞水東初禅師は日向国飫肥(現宮崎県日南市)領主、伊東家の出身と伝わっています。同地の安国寺に出家、のち、瑞巌寺99世雲居希膺禅師に参じ、その法を嗣ぎました。仙台藩祖伊達政宗公、二代藩主伊達忠宗公、政宗公息女五郎八姫様の深い帰依をうけた洞水禅師は、領内に円通院・天麟院・大仰寺等、現在に残る名刹を開創するだけでなく、本山妙心寺にも三住し、さらには18名もの法嗣を育てられました。その高徳・業績を讃え、死後に大機円応禅師と諡されており、瑞巌寺では洞水禅師を再中興開山と位置付けています。
師である雲居禅師が伊達家62万石の帰依僧として華々しい活躍を遂げたのに対し、言葉・行為の跡を留めない「没蹤跡」が信条だった洞水禅師は、ややもすると地味な印象は免れません。しかし、洞水禅師が守成に徹し、雲居禅師が遺された足跡をしっかりと繋いでくれたからこそ、瑞巌寺は現在まで東北一の臨済禅の道場として、厳然たる姿を維持することが出来ているといえるでしょう。
2020年は没後349年を数え、350年諱にあたることから遠諱大法要を厳修し、関係各所から資料を出陳して頂き特別展を開催する予定でしたが、昨今の事情を鑑みて来年に延期されることになりました。このような状況ではありますが、洞水禅師の御恩に報いるべく、館収蔵品を中心とした展覧会を実施いたします。自己を誡めて、果たすべき役割を全うした洞水禅師の人柄こそ、現代に求められるものではないでしょうか。本展覧会を通じて洞水禅師の人となりに触れて頂き、少しでも皆様の心に響くものがあれば幸甚に存じます。

展示作品リスト

作品名称 筆者 数量 時代
洞水東初像 絵所左近/虚櫺了廓 1幅 寛文13年(1673)
洞水東初像(大仰寺蔵) 絵所左近(徳栄)/木庵性瑫 1幅 延宝8年(1680)
洞水禅師福浦島毒龍庵坐禅図 荒川如慶周良/天嶺性空 1幅 享保17年(1732)
伊達忠宗像 不明/洞水東初 1幅 (万治元年~寛文元年中)
雲居希膺像 左京亮勝綱/徹宗宗源 1幅 万治3年(1660)
洞水東初宛書状 雲居希膺 1幅 正保2年(1645)
雲居忌告報 洞水東初 1幅 寛文2年(1662)
三住妙心法語 洞水東初 1幅 寛文9~10年(1670)
扁額「瑞嵒圓福禅寺」拓影 1面
扁額「瑞嵒圓福禅寺(旧)」 1面 江戸時代
扁額「瑞嵒圓福禅寺(旧)」拓影 1面
関山慧玄像 不明/洞水東初 1幅 江戸時代
洞水東初遺偈 鵬雲東搏 1幅 江戸時代
天麟院五郎八姫像 不明 1幅 江戸時代
伊達光宗像 不明/鵬雲東搏 1幅 延宝5年(1677)
徹宗宗源像 不明/鵬雲東搏 1幅 延宝4年(1676)
扁額「護国」拓影 洞水東初(原字) 1幅
大慈院殿拈香法語 洞水、他作/鵬雲、他筆 1帖 江戸時代
松嶌山什物新添目 鵬雲東搏・夢庵如幻 1冊 江戸時代
御本手茶碗 銘イスカ 1口 李朝17世紀前半
往生要歌 雲居希膺作 1冊 慶安3年(1650)
往生要歌版木 5枚 江戸時代
往生要歌集復刻版 1冊 昭和51年(1976)
龍山三開祖伝 夢庵如幻撰述/象外慧休筆 1冊 元禄9年(1696)
扁額「定照」 洞水東初(原字) 1面 寛文3年(1663)
扁額「圓通院」拓影 洞水東初(原字) 1面
扁額「法性院」 洞水東初(原字) 1面 江戸時代
毒龍菴碑拓影 天嶺性空(原字) 1幅

展示作品より

洞水東初像 1幅  絵所左近筆 虚櫺了廓賛  寛文13年(1673)

洞水(1605~71)は日向国飫肥(宮崎県日南市)出身。幼時に出家し、江戸東禅寺嶺南の元から仙台覚範寺清岳に師事した。瑞巌寺に雲居を迎える事を政宗に進言してその来松を果たし、雲居に嗣法。雲居の後を受け当山百世となる。
2代忠宗、天麟院五郎八姫の帰依厚く、円通院・天麟院・富山大仰寺等12ヶ寺を開創。18人の法嗣を育て、没後霊元天皇から大機円応禅師と勅諡された。
当像は洞水没後2年、大祥忌(3回忌)に制作された。

絵_洞水東初像_絵所左近貞綱筆_虚櫺了廓賛_本紙

伊達忠宗像 1幅  筆者不明 洞水東初賛

忠宗(1599~1658)は政宗・愛姫夫妻の長男。幼名虎菊丸。慶長16年(1611)、江戸城で元服し、二代将軍秀忠から一字を拝領し忠宗と称した。寛永13年(1636)に政宗が没し、2代藩主となる。藩政の基盤を確立し、領内の経済・産業の発展に努めた。
仙台城二の丸や仙台東照宮等を造営し、また、父政宗の遺言を守って名僧雲居希膺を瑞巌寺99世住職として迎え、雲居・洞水に深く帰依し、大檀越として援助を惜しまなかった。墓所は仙台経ヶ峰、感仙殿。

絵_伊達忠宗像_筆者不明_洞水東初賛_本紙

三住妙心法語 1幅  洞水東初筆  寛文9年~10年(1670)

寛文9年(1669)に妙心寺住職として上山した洞水が述べた法語。仏事を詠んだ漢詩を朗唱し、祖師の徳を讃える。当法語は「二祖三仏忌」に詠まれたもので、各日に営まれる法要は、報恩のための重要な行事となっている。二祖三仏忌は以下の通り。

達磨忌(10月 5日・禅宗の初祖、達磨大師の命日)
関山忌(12月12日・妙心寺開山、関山慧玄の命日)
佛成道(12月 8日・釈尊が大悟された日、成道会)
佛涅槃( 2月15日・釈尊が亡くなった日、涅槃会)
佛誕生( 4月 8日・釈尊の誕生を祝う日、降誕会)

墨_洞水和尚拈香法語_達磨忌云々_ 洞水東初筆_本紙

扁額「瑞嵒圓福禅寺」拓影 1面 原字洞水東初筆

国重要文化財に指定されている中門の棟木に掲げる。中央に縦2文字ずつ3行に「瑞嵒圓福禅寺」、右上関防印は「一華」、左下は「三住妙心初洞水書」の落款と印章を刻む。推されて妙心三住となったのは、洞水65歳、寛文9年(1669)秋の事であり、最晩年に属す作品であるが、筆力の衰えはどこにも見られない。
実直・謹厳な書風は、洞水の真骨頂といいうるものである。

拓_扁額_瑞嵓円福禅寺_拓影_原字_洞水東初 採択_新倉・金木_1全体

【学芸課より】

洞水東初禅師の350年遠諱大法要は来年秋に延期する事となり、今回宝物館の展示も規模を縮小し、館蔵品のみでの企画展となりました。残された資料も少なく、伊達家の帰依僧として活躍する師の雲居禅師に比べ、正直地味な展覧会になるかと危惧しておりました。しかし、数少ない墨跡を丁寧に意訳してみると、師の意外な一面があらわれ、その個性の強さに驚かされるとともに、改めて原本に立ち返る大切さを感じました。1年後、関係各所から貴重な資料をお借りして、同じタイトルで特別展を開催する予定です。開催までの期間、資料を丁寧に読み込み、洞水禅師の業績や人柄により深く触れることができる展覧会を目指したいと思います。