ウィズ・コロナという言葉を耳にするようになって2年余りとなりました。
人と談笑すること、会食をすること、宴会をすること、旅行をすること、更に舞台や音楽ライブを鑑賞したり、
美術館や博物館で展覧会を楽しんだりなど、あらゆることに制限が伴い、意気苦しさを感じる生活が続きました。
当館でホッとひと息つける展覧会は如何でしょうか。
この度の展覧会のタイトルにある「可笑し」は、平安時代にあっては「もののあわれ」と並ぶ美的理念の一つで、
知的な情緒をそそられる感覚的、直感的な明るい情緒をさします。
室町時代以降は、滑稽な意で用いられ笑いの底流へと変化していったようです。
この言葉が表現する意味は実に多様です。
(1)普通とはちがうところがあって笑いたくなるさま。不釣り合いで嘲笑したくなる。
(2)普通と様子が違うことに気づいて疑わしく思うさま。怪しい。
普通とは違った格別な趣があるさま。風情がある。美しい。かわいらしい。魅力がある。立派である。
今展では、画家・書家・僧侶が描いた吉祥画、俳画、戯画、禅画など「可笑し」な作品を集めてみました。
「いと=大変」という枕をつけた展覧会で、更に心安らかに穏やかに本年を送り、アフターコロナの新しい年を迎えたいと願っております。
※表は横にスクロールします
ゆく年くる年 丑と寅 | |||
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作品名称 | 筆者名 | 数量 | 時代、他 |
豊干虎図 | 得明 | 1幅 | 昭和5(1930) |
四睡図 | 狩野常信 | 3幅対 | 江戸時代前期 |
絵馬 牛図 洋犬図 | 佐久間玄德 | 2面 | 慶安3(1650)/五大堂奉献 |
色紙 虎 | 隆芳全昭 | 1枚 | 甲寅・昭和49(1974) |
いっぱいあるアル~多福・多寿・多子 | |||
作品名称 | 筆者名 | 数量 | 時代、他 |
多福図 | 永州 | 1幅 | 江戸~明治時代 |
百福集合図 | 山田松華 | 1幅 | 大正8(1919) |
寿老人図 | 東 東洋 | 1幅 | 天保8(1837)83歳 |
七福神大鯛図 | 遠藤曰人 | 1幅 | 天保3(1832)75歳 |
百鶏図 | 佐久間六所 | 1幅 | 江戸時代 |
百馬図 | 梅津月橋 | 1幅 | 江戸時代 |
能面 | 5面 | 室町時代・江戸時代 | |
松に鶴亀図屏風 | 東 東洋 | 六曲一双 | 江戸時代/(12・1月展示) |
いろは歌屏風 | 山岡鐵舟 | 六曲一双 | 明治28(1895)頃/(2・3月展示) |
ユーモアと俳味 | |||
作品名称 | 筆者名 | 数量 | 時代、他 |
虎渓三笑自画賛 | 弘厳玄猊 | 1幅 | 江戸時代 |
太公望図 | 岡本一平 | 1幅 | 大正11(1922)以降 |
佛誕図 | 岡本一平 | 1幅 | 大正11(1922)以降 |
骸骨遊戯図 | 倉田松濤 | 1幅 | 大正時代 |
張果老図 | 高 嵩嵺 | 1幅 | 江戸時代/2代目嵩谷 |
朱画達磨自画賛 | 巌谷小波 | 1幅 | 大正~昭和時代 |
寒山拾得図 | 可堂 | 1幅 | 大正2(1913)/観月楼 |
日吉山王社祭礼図巻 | 不明 | 1巻 | 江戸時代 |
ゆる可愛い | |||
作品名称 | 筆者名 | 数量 | 時代、他 |
俳画 蛙相撲図 | 遠藤曰人 | 1幅 | 天保5(1834)77歳 |
托鉢図自画賛 | 鄧州全忠 | 1幅 | 大正12(1923) |
大津絵 鬼念仏図 | 1幅 | 江戸時代 | |
大津絵 | 紀 梅(楳)亭 | 1幅 | 江戸時代(1788~1810制作) |
お多福画賛 | 三餘文峰 | 1幅 | 近代 |
大幅の巨大な画面いっぱいに描かれているのは中国の豊干禅師と虎。
豊干は寺内を虎に乗って歩いたという、奇行で知られる中国唐時代の禅僧。
道釈画の画題の一つだが、自由闊達な筆で、何とも可笑しな作品。
本紙左上に「庚午夏日」の款記がみえる。
大正時代まで無住であった松島円通院上間に得明の作品があることから、昭和5年(=庚午)の作と考える。
得明は、蔦谷龍鴨に師事した日本画家・村上得明(明治30年=1897生まれ)のことか。
雄鳥、雌鳥、雛鳥が画面いっぱいに描かれる。
草花や動物を数多く描く吉祥図の一つ。雄鳥の鶏冠が画面に華やかな彩りを添えている。
款記には「應需(求めに応じて)」とあり、注文により作画したことが判る。
様々な種類の鳥を描く百鳥図はあるが、鶏だけは珍しい。
酉年の注文か?いと可笑し。
佐久間六所(1792~1863)は江戸時代後期の仙台藩御用絵師。
諱は明繁、通称・立徳。瑞巌寺本堂の羅漢の間を描いた得楼の祖父。
着物を着た女性が、扇子で顔を隠して楚々と近づいて、目の前で扇子をさげたら・・・
と想像してみてほしい。
顔立ちが丸く頬がふくれ鼻が低いお多福顔そのものが画面いっぱいに描かれる。
正に福相、目の前に現れたらきっと笑顔になる。
画賛も「雑巾と増金」「拭くと福」の掛け合いで、いと可笑し。
賛 雑巾者をかめの/顔尓あたなして/今日福くゝ/あ春も福くゝ
筆者については未詳。